まこちゃの、考える映画ブログ

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ターミネーターじゃない方の「T2」レントンは希望を取り戻したのか?絶望したのか?

2017年4月8日に日本で公開された「T2」は、「ターミネーター」じゃなく、90年代に大流行した映画「トレインスポッティング」の20年ぶりの続編である。
何故「T2」なのかは、監督であるダニー・ボイルは「映画の続編として理想的なのは『ターミネーター2』で、リスペクトの意味を込めて」と語っている。

トレインスポッティング」の1作目は1996年に公開され、R-15指定でありながら、若者を中心に人気を集め、部屋に「トレインスポッティング」の蛍光オレンジのポスターがあるだけで、オシャレな気持ちになれたし、「トレインスポッティング」を観ている事が「映画を分かっている奴」気分になれた。
まさに、90年代のカルチャーを代表する1作だったのだ!

トレインスポッティング」のあらすじは…?
ヘロイン中毒のレントンは、仲間たちと自堕落な生活を送っていた。
それでも、彼の事を愛してくれる両親と共に「禁ヤク生活」に挑み、就職もして更生したかのように見えたが、再びヘロイン生活に逆戻りしてしまう。
再度、仲間たちと自堕落な生活に戻るかと思われたレントンは、仲間たちの大金を盗み、街を脱出するのだった。

一大ムーブメントを巻き起こす要素が皆無の、どうしようもない内容のように見えるが、マニュアル通りに生きていけない若者の苦悩が見事に表現され、最後にレントンが走って行った時には「レントンの輝かしい未来」を想像して清々しい気持ちになったもんだ。

20年後レントンは帰って来た!
そして「T2」は、レントンが走り去ってから20年後が描かれる。
レントンのかつての仲間であるサイモンは、女性を使い盗撮した映像で恐喝をして生活費を稼ぎ、スパッドは人生が上手くいかず自殺未遂を起こし、ベグビーは刑務所暮らしから逃げ出し、息子を犯罪の道に誘うなど、成功とは程遠い人生を歩んでいた。
その地に再び戻って来たレントン
スパッドに「薬物を止めるなら、他に熱中できる事を探せ」とアドバイスし、サイモンには20年前に持ち逃げした大金の一部を渡し「家族も仕事もある、明日にはこの街を出る」と冷静に語るレントン

そこには、20年前より大人になり、立派になった姿があった。

だが、サイモンはレントンを恨んでおり、恨みを晴らす目的を込めて、レントンに再び「一緒にやろう」と持ち掛けるが、レントンは全く取り合わず、飛行機に乗って帰ってしまう。

…と思ったら、再びサイモンの前に姿を現すレントン
実はレントンは子供もおらず、妻に家を追い出され、会社ではリストラ候補になるなど、やはり成功とは程遠い人生を送っていた。

サウナを作り、事業を起こす計画を成功させる為、
再び手を取り合うサイモンとレントン

だが、レントンが戻った事を知ったベグビーは、20年前の復讐をする為に、レントンを探し始める。

サイモンとレントンは、怒り狂ったベグビーから逃れ、人生をリセット出来るのか?
スパッドは新たな趣味を見つけ、麻薬を断ち切れるのか?
4人の止まっていた時間が、再び動き出す。


「こいつら変わってないな!」が、こんなに悲しい映画もそうは無い
「T2」のメインキャラクター4人は全く変わっていなかった。
映画の続編などで、登場キャラクターの中身が変わっていないと「こいつ変わってねぇなぁ」と愛着を感じるものだが、この映画は違う。
リアルに20年という歳月が流れ、俳優の容姿もリアルに変わってしまった事もあるだろう。
20年前は若くて、未来もチャンスもあったかもしれないが、それすらも失ってしまったという悲しさもあるだろう。
「なんか、悲しい…」そんな映画だった。

監督のダニー・ボイルはインタビューで
「やっと自分の身の回りを整理しないといけないっていうことに気が付くんだ。それはつまり大人になるってことさ。この映画はいわば“失望した子供たち”を描いている。」
と語っており、20年越しで大人になった4人の姿を描いたという。

レントンが得たのは希望か絶望か?
映画は、イギー・ポップの音楽に合わせてレントンが子供の頃のベッドルームで踊るラストシーンで締めくくられる。
それは、未来もチャンスもあった若い頃に思いを巡らせているのかもしれない。
何もかもを失ったように見えるレントン、だが昔の仲間との再会を経験し、かつての「生きる力」を取り戻したかのように見える。
果たしてレントンの胸の内にあるのは希望か?絶望か?
20年前に大金を盗んで走り去った彼を見た時と同じ、今後を想像させられてしまう。

 

かつて「トレインスポッティング」を観た「若者だった」人たちは、今の彼らをどう感じるんだろうか?