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映画『ハウス・オブ・グッチ』で、唯一いい奴だったのはパオロじゃないか?説を検証する

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現代のファッションブランドの元祖と呼ばれ、誰もが知る世界的な高級ブランド「GUCCI」。
その「GUCCI」にまつわる、一族の確執と没落を描いた、衝撃的な人間ドラマ『ハウス・オブ・グッチ』。

後に「レディ・グッチ」とも呼ばれる、野心家のパトリツィアや、人を経歴だけで判断するロドルフォなど、嫌な奴のオンパレードみたいな映画でした。
では本作に、良心的な人間は出て来ないのか?というと、そうではありません。
パトリツィアに翻弄されるマウリツィオも、確実に「根はいい奴」ですが、本作で唯一いい奴だったのは、パオロ・グッチじゃないか?という部分を検証したいと思います。

映画『ハウス・オブ・グッチ』あらすじ
運輸業を営む父親の会社で働くパトリツィア。
彼女は、あるパーティーで、弁護士を目指すマウリツィオ・グッチと偶然知り合う。
マウリツィオは、富裕層を中心に人気を誇るブランド「GUCCI」の3代目だった。
マウリツィオの真面目で純粋な性格が気に入ったパトリツィアは、偶然を装いマウリツィオに近付き、2人は交際に発展する。
次第に、パトリツィアとの結婚を考えるようになったマウリツィオは、父親で「GUCCI」の経営の中心に携わっている、ロドルフォにパトリツィアを紹介する。
しかし、経歴を重視するロドルフォは、実家が運輸業であるパトリツィアを気に入らず、マウリツィオに別れるように促す。
この事がキッカケで、マウリツィオはロドルフォと絶縁するが、叔父のアルドが、マウリツィオを自身の「GUCCI」の経営に引き込む。
GUCCI」の経営に携わる事に、消極的なマウリツィオと対照的に、パトリツィアの中には野心が芽生えていた。

パオロ・グッチとは?
1980年代の「GUCCI」の社長だったアルド・グッチの息子で、デザイナー。
GUCCI」を富裕層だけではなく、いろいろな人に身に着けてもらう為「低価格で販売する」という思想を持っていました。
ですが、高級思想の「GUCCI」一族から「危険思想を持つ異端児」と見なされ、追放されたという経歴があります。
『ハウス・オブ・グッチ』では、パオロ・グッチをジャレッド・レトが演じています。
小太りの少し情けない容姿のパオロなので、ジャレッド・レトの面影もありませんし、かなりコミカルな演技を見せています。

パオロはデザイナーとして、成功したかっただけじゃないか!
『ハウス・オブ・グッチ』では、パオロは「GUCCI」のデザインに「革新さが必要である」と主張しますが、アルドからは無視をされ続けます。
ならばと、パオロは叔父のロドルフォに、自身のデザイン画を見せますが、めちゃくちゃに罵られます。
ロドルフォの口調は紳士的ですが、発せられる言葉は凶器です。
パオロは、その後にロドルフォがデザインしたスカーフに立小便をしますが、その権利はじゅうぶんにあるでしょう。

その後、独立したパオロですが、デザイナーの仕事は無く、靴下も買えないぐらいの貧困状態に陥ります。
それでも、服のデザインを続ける、一途なパオロ。
そのパオロの想いを利用し、自分の思い通りに操ろうと近付くパトリツィアは、パオロのアトリエを訪ねます。
この場面での、純粋なパオロと野心家のパトリツィアの対比が凄く、パオロが如何にいい奴か?が、ここで分かるでしょう。

パオロは「デザイナーとして成功したい」という純粋な想いを、ただただ抱えていただけなのです。

 

『ハウス・オブ・グッチ』におけるパオロの2大名場面
『ハウス・オブ・グッチ』の後半では、パオロはパトリツィアの策略にハマり、デザイナーとして強制終了させられます。
ですが、それがパオロの2大名場面とも呼べる展開に繋がるので、ご紹介します。

パオロの名場面①
ファッションショーを終了させられ、妻と向き合うパオロ
パオロは、パトリツィアと取引をし、自身のファッションブランドを展開する為のラインを確保します。
その後、パオロがデザインした服でファッションショーが行われるのですが、ここでパトリツィアが「著作権違反」を訴えた為、捜査官がショーの会場に現れ、パオロのファッションショーは強制的に終了となります。
ここで、パオロの妻がショーのパフォーマンスとして歌声を披露していたのですが、捜査官により観客とモデルが追い出され、後ろで演奏していた奏者もいなくなります。
それでも歌い続ける妻が、異変に気付き歌う事を止めたタイミングで、バックヤードにいたパオロと向き合うのですが、この場面のなんとも悲しい事か…。

いよいよ夢への第一歩を踏み出した瞬間にこの仕打ち、この後にパトリツィアとマウリツィオ夫婦を口汚く罵りますが、当然その権利はありますね。

パオロの名場面②
「お前は俺のバカ息子だ」
パオロは、パトリツィアの策略にハマり、父親のアルドが隠していた所得隠しの書類を渡してしまい、アルドは刑務所に入れられます。
1年後に出所したアルドは、住む場所も失い、パオロのアトリエに匿われるのですが、財産を失い妻にも逃げられたパオロは、お金に困っており、保有していた
GUCCI」の株を売却してしまいます。
「やり直すキッカケ」を、完全に失ったアルドは、パオロを罵りますが、最後は抱きしめ「お前はバカ息子だ、だけど俺のバカ息子だ」と伝えます。
何とも感動的な、味わい深い場面でしょうか。

マウリツィオとロドルフォより、確実に父子の絆は上だ!

このように、一族の確執を描いた『ハウス・オブ・グッチ』において、ただただデザイナーとして成功する事を夢見ただけのパオロが、どんなに純粋でいい奴か?が分かりますね。
ただ「GUCCI」の一族には向かなかっただけです。悲しい事に…。