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ジョーダン・ピールの新作映画『NOPE/ノープ』って結局どんな映画だったのか?(ネタバレあり)

 

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ゲット・アウト』や『アス』などの作品で、高い評価を得ているジョーダン・ピール監督。
社会的なメッセージをホラー映画に取り入れ、頭打ちだったホラー映画を、間違いなく一段階上に持って行った監督だと思ってます。

その、ジョーダン・ピール監督の新作『NOPE/ノープ』。
映画の予告編を見ても、空に何か丸いのが浮いているぐらいしか分からない、謎しかない内容でした。

では、実際『NOPE/ノープ』はどんな内容だったのでしょうか?
ジョーダン・ピール監督のインタビューとかから、自分なりに考察してみます。

 

『NOPE/ノープ』あらすじ
田舎町で広大な牧場を営むヘイウッド家。
この牧場では、映画で使われる馬をキャスティングしており、非常に重宝されています。
次の牧場の跡継ぎになる予定のOJでしたが、空から飛来した異物により、父親が死亡する場面を目撃します。

3年後、父親の跡を継いだOJですが、不愛想な性格から、なかなか仕事に繋がりません。
OJは、カウボーイのテーマパークを経営している元子役のリッキーに、馬を何頭か売却していました。
この状況に、OJの妹エメラルドは呆れ気味ですが、OJも牧場に関わらず、エンタメ業界へ自分を売り込む事に必死のエメラルドに呆れていました。
OJの不愛想さから、1つ仕事を失ったOJとエメラルドは、牧場に戻ります。
その夜、不気味な飛行物体が突如牧場の上空に現れ…。

 

血まみれのチンパンジーから始まる謎だらけの映画

『NOPE/ノープ』は、映画の予告を見ても、その全容が全く掴めず、おそらく予告だけだと「ホラーなのか?SFなのか?」と、ジャンルを特定する事すら難しい作品です。

ただ「上空に何か出現するらしい」という情報だけはあったので「おそらくSF映画」と思って観に行ったのですが、いざ映画が始まると、アメリカのシチュエーション・コメディみたいな台詞が聞こえて来て、その後に登場するのは、血まみれのチンパンジー

「何じゃこりゃ!」

全く先が読めない始まり方をした本作は、開始数分で主人公であるOJの父親が、空から降り注いだ「何か」に刺さって死亡するなど、不思議な展開が続きます。

「一体何が起きているのか、予想も出来ない…」

こいつは、予告編通りの映画だぜ。

 

 

 

 

以下、ネタバレとなります、まだ先を知りたくない方は、ご注意ください。

 

 

 

 

ネタバレ


「人食いUFOを撮影せよ!」

全く予測のつかない始まり方をした『NOPE/ノープ』。

ですが、中盤から展開されるのは、謎の人食いUFOとOJ達の独特の攻防戦です。
人食いUFOは、上空から地上にいる生物を吸い込み吸収するという、恐ろしい存在なのですが、目を見なければ大丈夫なようです。
ってか、こいつの目ってどこにあるのか?という疑問は残ります。

対するOJは、妹や電気屋さんと共に、この人食いUFOを退治する…じゃなく、目的は写真を撮影して高く売りつける事です。

なんて低い志…と思いますが、唐突に出現した、この謎のUFOをいきなり倒せる訳も無く、写真撮影を目的にするぐらいがリアリティーがあっていいかもしれません。

さらに伝説の撮影監督や、UFOを撮影に来た部外者も登場し、事態は混乱に陥ります。

ジャンルが不明の『NOPE/ノープ』ですが、あえて言えば「SFコメディ」でしょうか?
間違いなくジョーダン・ピール監督の新境地です!


「馬の名前やチンパンジーに込めた『ハリウッド批判』」

蓋を開ければ人食いUFOを撮影するしないの物語だった『NOPE/ノープ』。

じゃあ、オープニングのチンパンジーは何だったのか?

『NOPE/ノープ』に登場する重要人物の1人に、テーマパークの経営者リッキーがいます。
リッキーは、元々は子役で冒頭に登場したチンパンジーと、シチュエーション・コメディのドラマに出演していました。
ですが、突然凶暴になったチンパンジーが、出演者やスタッフを次々に撲殺していきます。

ここの場面、この映画で一番恐怖を感じます。

そして、唯一生き残ったリッキーですが、彼は今でも子役の時に出演した、チンパンジーとのドラマを自慢げに語ります。
チンパンジーが暴れた真相は、それとなく隠しながら。
そのリッキーのテーマパークに、牧場の経営難から自分の馬を売っているのがOJです。

OJの一家は、代々ハリウッド映画に馬を提供してきました。
ですが、年老いた馬はハリウッドでは必要なく、OJはかつてハリウッドで活躍した馬をリッキーに売っています。
映画の作中に度々出る馬やチンパンジーの名前は、かつてハリウッドで活躍しながらも、今は忘れ去られた動物たちです。

ここに、ジョーダン・ピール監督のメッセージが込められています。

近年ハリウッドでは、かつてのスターが容姿の老いから、出演依頼が無くなり切り捨てられてしまうという問題があり「女優は40歳で用済み」が常識とも言われていました。

まるで、作中に登場する馬やチンパンジー、もっと言えば子役の時はスターだったリッキーや、馬の需要があった時は稼いでいたOJの牧場もそうです。

しかし、用が無くなれば切り捨てるハリウッド…ジョーダン・ピール監督は「この業界は“ハリウッド・マシーン”とも呼ばれている」と語っており、この作品に登場する人物は、「ハリウッド・マシーン」に魂を吸われ、何も残らなかった人達なのです。

この「ハリウッド・マシーン」を形にしたのが、人食いUFOなのでしょう。
生物を吸収しまくった人食いUFOは、後半姿が変わりますが、栄華を極めたハリウッドを具現化したように感じます。
そして、最後はカウボーイの風船を取り込み、人食いUFOは消滅しますが、これは偽物を取り込んだせいで勢いを失っているハリウッドへの、ジョーダン・ピール監督なりの皮肉でしょうね。

『NOPE/ノープ』は「SFコメディ」と書きましたが、実は風刺や皮肉、メッセージがしっかりと入った作品で、実にジョーダン・ピール監督らしい映画と言えますね。

【Netflix】映画『カーター』は、なかなかの実験作だけどツッコミ要素満載の作品だった!

(C)2022 Netflix

Netflix」で2022年8月5日から配信が始まった、韓国のサスペンスアクション映画『カーター』

記憶を失った男が、祖国とか家族とかを守る為に、戦いに身を投じるという内容。

ジェイソン・ボーン」シリーズとか、2002年の『カンパニー・マン』みたいな作品かと思って観賞してみると、思ったのといろいろな意味で違ったので、普通に感想を書いていきます

『カーター』あらすじ
記憶を失った状態で、理由も分からず「CIA」と謎の組織の争いに巻き込まれた男カーター。
耳に埋め込まれた通信装置から聞こえる、謎の女の指示に従うしかなくなったカーターですが、実はカーターには世界に蔓延しているウィルスを解決に導く、ある任務が課せられていました。
カーターが失った記憶の秘密は?謎の組織の正体は?
さまざまな謎が交錯する中、カーターの孤独な戦いが始まります。


ワンカットで展開される、革命的なアクション映画
記憶を失った男、カーターの孤独な戦いを描いた本作
なんといっても一番の特徴は、記憶を失ったカーターが目覚めて以降、ワンカットで物語が展開されるという点です。

ワンカットで物語が進行する作品は、過去にもあったし、特にそこが珍しい訳じゃないですが、なんと『カーター』はアクション満載の内容で、それをワンカットで見せているのは、ハッキリ言って革命的ではないでしょうか?

ドローンを駆使したカメラワークは、最初のやくざがいる銭湯での闘いから迫力満点で、この独特のカメラワークを見るだけでも本作は価値があると思います

とにかく実験的な作品だと思います!

と思いますが…映画として見ると「ん?」と思う部分もありまして、以下から個人的に気になったツッコミどころとなります

 

 

 

ツッコミどころ

 

・「不死身か?」って思う程に何があっても死なないカーター
いきなりネタバレしてしまうと、カーターは特殊工作員で、世界に蔓延したゾンビウィルスの特効薬を開発させる為に、抗体を持った女の子を実験施設に連れて行く事が使命となっています。

特殊工作員だから強いのは当たり前ですが、裸でガラスを突き破ろうが、高いビルから落ちようが、爆風を近距離で受けようが、とにかく死なない

別にカーターの死ぬところが見たい訳じゃないけど、ここまで不死身だと、流石にアクション映画としてどうなのよ?というレベルです。

途中から「カーター無敵モードなんだ」と思いました。

・僅か2時間で、流石にこれは無理があるって!
『カーター』の最大の魅力は、ドローンなどを駆使した独特のカメラワークで、ワンカットで物語が展開される点です。

ハッキリ言えば、ワンカット風に見せている映像で、いくらワンカット風とは言え、敵の工作員と空中で繰り広げる、パラシュートを取り合う戦いは、もうちょい上手く見せてほしかった…だって落ちてないじゃん!

で、ワンカット風の展開なので、作中でも全部が2時間の出来事として描かれています

記憶を無くしたカーターが、訳も分からず装備を渡されて、抗体を持つ女の子を助けて、追手を振り切り飛行機に乗って、北と南の朝鮮半島問題に巻き込まれて、飛行機が墜落して、ウィルスに侵されたゾンビの集団に襲われて、北朝鮮の反乱者に拘束されて、仲間(実は嫁)を助けて逃亡中に記憶が戻って、最後は自分の娘を守る為に、北朝鮮の反乱者も倒して治療院に向かう電車に乗り込む!が、2時間の出来事です

濃すぎる!ってか無理がある!

もし2時間で、本当にここまで出来るなら、自分が過ごしてきたこれまでの2時間を、見直していこうと思いました

・ラストで確信した!これって…
とにかく豪快な作品の『カーター』ですが、本作のラストで、カーターの家族が乗り込んだ列車の線路が爆発して終わります。

これまで、いろいろあった、めちゃくちゃな展開は「まだ続くよ~」ってことですよね。

このラストで確信したんですが、この作品は実はコメディなんだって

で、あれば、ここまでの豪快な展開の数々も納得がいくし、カーターが死なないのも「コメディだから」で説明がつく。

と言う事で、アクションコメディ映画『カーター』は、映像は本当に革命的なので、間違いなく一見の価値はありますが、流石に2時間は長いかな?という印象です

タイを舞台にした悪夢のようなホラー映画『女神の継承』。ラストシーンから受け取れる、あまりにも救いが無さ過ぎる作品のテーマとは?(ネタバレあり)

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タイの東北部に住む、祈祷師の一族に密着取材した、ある撮影隊が遭遇する、あまりにも理不尽な恐怖を描いたホラー映画『女神の継承』
ドキュメンタリー風の作風(モキュメンタリー)となっている本作は、撮影隊の残した映像を通して、女神を信仰する、ある一族に降りかかる恐怖を、次々に目の当たりにする事になります。

クライマックスは、近年のホラー映画でも稀にみる「地獄絵図」が広がる本作
哭声/コクソン』(2016)のナ・ホンジンが原案とプロデュースを務めた本作の魅力と、ラストシーンから受け取る事が出来る、救いようの無い本作のテーマについても考察してみます。

『女神の継承』あらすじ
2018年、祈祷師の取材を続けていた取材班は、タイの東北部で、代々女神を信仰している、ある一族の取材を開始します。
現在、女神を体内に宿らせ継承している祈祷師のニム。
二ムには、ノイという姉がいますが、ノイは女神の継承を拒否した過去があり、二ムとノイの間には確執があります。
取材班は、ノイの娘で二ムの姪にあたるミンと出会います。
ミンは、若くて綺麗な女性ですが、兄と父親を失った直後から、情緒が不安定となり、奇妙な言動を見せるようになります。
更に、ミンは幽霊が見えるようになっており、二ムは「女神が次の継承者に、ミンを選んだ」と考えます。
取材班は、一族の「女神継承」の瞬間を撮影しようと、ミンに密着しますが、ミンの様子がどんどんおかしくなっていき…

女神の力を信じるニムと、女神を嫌悪しているノイとミン

映画『女神の継承』は、前述したようにタイの祈祷師に密着した、取材班が残した映像という設定の、モキュメンタリーです

取材班が最初に密着する二ムは、一族が代々受け継いできた、女神の媒体となっている祈祷師で、体内に宿らせた女神の力で、人々を救っています。
と言っても、超能力がある訳でなく、出来るのは「何かに憑依された人」を救う為の儀式を行ったり、アドバイスをしたりという程度です。

一族が代々受け継いできた女神の、次の後継者とされたのがミンです

ミンは若い女性で、女神の存在など最初から信じていません。と言うか、祈祷師を完全に馬鹿にしています
ミンの母親ノイも、女神も祈祷師も毛嫌いしており、二ムとも仲が良くありません。

しかし、ミンに起きている異変の数々から、女神が次の後継者に選んだのは、どう考えてもミン。
女神に選ばれてしまった以上、ミンの意思と関係なく、一族に代々伝わる「女神の継承」を行わないといけないのか?

ここの確執が中心となり、物語が展開されると思ったら…。

ここから、ネタバレ全開になるんで、自己責任で読んでいただけると嬉しいです。

 

 

 

 

(ネタバレ)

ミンに憑依したの、女神じゃないってよ!

本作の中盤から、ミンは何かに憑依されたように、奇妙な行動を取るようになります。
ミンがおかしくなってしまった為、耐えかねたノイが「降参よ、継承の儀式をやってちょうだい」と言いますが、ここで衝撃の事実が判明します

当初は女神だと思っていたミンに憑依した「何か」ですが、二ムから「ミンに憑依したのは女神じゃない」と衝撃の発言が…。
じゃあ、お前は誰だよ!という話ですが、ここから、ニムによる真相究明が始まります。

祈祷師と悪霊の「エクソシスト」的な戦い

ニムがミンに憑依した何かの正体を探っている間、ミンの変化に耐えられなくなっていたノイは、自分で祈祷師を探して、除霊をお願いします
ですが、ニムからすると、この祈祷師は偽物で、インチキな儀式を行っていました。

そして、このインチキ儀式以降、ミンは明らかに普通ではなくなります

ここからニムは、ミンの中の悪霊と対峙するようになるのですが、前述したように超能力がある訳でなく、女神への祈りを捧げるしか出来ない為、基本的に無力。
ニムも、自分の無力さを痛感します
そして、ミンが突然行方不明になってから、本作は急展開を見せます

最強の祈祷師サンティ様の登場と、本作最大の恐怖「暗視カメラ」の映像

ニムの祈祷により、ミンの行方が分かりますが、それは何の関係も無さそうな廃工場でした。
ミンの体内から悪霊を追い出す為、ニムが頼ったのは、本物の霊媒師サンティ。

サンティは、大勢の弟子を従えている凄い人で、ミンを少し見ただけで、体内の悪霊の正体を暴きます
ミンが悪霊に憑依されたのは、ミンの父親に原因がありました。

ヤサンティア家の末裔であるミンの父親ですが、過去にヤサンティア家は多くの人間を無差別に殺した過去があり、犠牲になった人達の強い呪いを受けていました
その呪いが、ミンに向けられ、ミンの中には人間、動物、さまざまな悪霊の集合体が憑依しています
悪霊の憑依を決定的にしたのが、例のインチキ儀式だった訳ですね。

この悪霊を払う為、ニムとサンティは儀式を行う事になりますが、7日間の準備が必要になります。

ノイは、儀式が始まるまで、ミンを自分の家の部屋に閉じ込めます。
ですが、夜中にミンが抜け出しているようで、その実態を掴む為に、取材班は暗視カメラを家の中に設置するんですが、この映像の数々が本当に怖い
「ほんとにあった! 呪いのビデオ」シリーズのような恐怖と言えば、お分かりいただけただろうか?

正直、ここまでの展開は、退屈に感じる時もあったのですが、この暗視カメラの映像から、本作の恐怖はノンストップで加速します

クライマックスの地獄絵図と、ラストのニムの独白の意味を考察

本作のクライマックスで、行方不明になったミンが発見された廃工場で、サンティがお払いの儀式を行います。
儀式は行われますが、肝心のニムが、儀式の直前に突然亡くなります

なので、サンティと弟子で儀式を進めていきますが、ハッキリ言ってミンに憑依した悪霊には無力で、何故かサンティの弟子も次々に悪霊に憑依され、ミンに従う犬みたいになります。
さらに、サンティも殺されてしまい、このタイミングで、ノイが「女神が憑依した」とか言い出し、ほとんど収拾のつかない地獄絵図が展開されます。
ここ最近のホラー映画で、最大の地獄絵図ではないでしょうか?

最後は、取材班が全員襲われ死亡し、廃工場の片隅に置かれた「ある物」を映し、映画は終了します。

ですが、エンドロール前に、ニムの最後のインタビューが流れ「最初から、女神の存在を疑っていた。自分の中に女神がいるのか分からない」と語ります。

つまり、ニムの一族が代々伝承してきた、人々を救う女神は、最初から存在しなかった可能性があります。
または、女神はいたけど、信仰心を持たないノイとミンを、最初から救う気は無く、文字通り「神に見放された」という事も考えられます。

ですが、神や霊を信じないミンにも、呪いの力だけは効果があり、最終的に地獄絵図が展開されます。

人を救う神は存在しない、または信じないと助けてくれないが、人の怨念から生まれた呪いは、信じようが何だろうが、確実に襲ってくる

『女神の継承』という映画は人間の持つ、嫌な、本当に嫌な部分をテーマにした、恐ろしい作品と言えるでしょう。

怖いけど、完成度がやたら高いし、ミン役のナリルヤ・グルモンコルペチさんが、本当にお綺麗なんで、そういう意味で、ホラー好きや「ほんとにあった! 呪いのビデオ」の長編シリーズが好きな方にはおススメしたい、なかなかの傑作です。

映画史上最高齢殺人鬼が大暴れなホラー映画『X エックス』ここまで「老い」を残酷に表現した映画も凄い!(ネタバレあり)

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1979年のテキサスを舞台に、映画撮影に泊まった牧場で、3組のカップルがとんでもない恐怖に遭遇するホラー映画『X エックス』
『へレディタリー/継承』『ミッドサマー』など、話題のホラー作品を世に放ってきた、新進気鋭のスタジオ「A24」の最新作『X エックス』は、映画史上最高齢の殺人鬼が登場する事で、公開前から一部で話題になっていました

ただ、実際に作品を観てみると、老いていく事への、容赦ない残酷表現が印象的で、間違いなく周囲の、お爺ちゃん、お婆ちゃんの見る目が変わるでしょう。

今回は『X エックス』の魅力を、ネタバレ込みでご紹介します。

『X エックス』あらすじ

1979年のテキサス。
女優のマキシーンと、その恋人で自称敏腕プロデューサーのウェインは、映画の撮影で人里離れた牧場へと向かっていました。
映画の撮影の為に、ブロンドが印象的な女優のボビー・リンと、ベトナム帰還兵で俳優のジャクソン、新人映画監督のRJと、その恋人で録音担当のロレインも、マキシーン達に同行します。
3組のカップルが宿泊する小屋を管理する、牧場主である老人のハワードは、3組のカップルを最初から煙たがっていました。
そして、ハワードの妻、老婆のパールは、マキシーン達を窓ガラスの向こうから見つめています。
ハワードに内緒で、ポルノ映画の撮影を始めたマキシーン達ですが、それは惨劇の始まりでもありました。

「ポルノ」と「ホラー」が熱かった70年代後半

『X エックス』の舞台は、1979年。
主人公であるマキシーンは、恋人のウェイン達と、映画の撮影に向かう所から、物語が始まります。
ただ、マキシーン達が撮影するのはポルノ映画。
それも、牧場主のハワードから借りた小屋で、承諾なしに勝手に撮影を始めます。

本作の舞台となっている70年代後半は、ポルノ映画が熱かった時代で『X エックス』のHPによると、作中で撮影されているポルノ映画は、実在するようです。

そして、ある事がキッカケで、ハワードとパールの史上最高齢殺人鬼による恐怖が始まりますが、1974年の『悪魔のいけにえ』1960年の『サイコ』1980年の『シャイニング』と、往年のホラー映画へのオマージュが満載となっています。

「老い」を受け入れられない、悲しみと恐怖の老婆「パール」

本作最大の特徴は、映画史上最高齢の殺人鬼である、ハワードとパールの存在です。
特に恐ろしいのが、老婆のパール。
若い頃は美人ダンサーだったみたいですが、年老いた現在は、若い時の面影は残っていません。

それでも、気持ちは若いパールは、マキシーン達カップルが訪れた事で、若い時の血が騒ぎます。
パールはマキシーンに近付いた後に、RJを誘惑しますが拒絶され、この辺で何か弾けたように、次々に若者に襲いかかります。

そして、パールを止めたいハワードも、事の元凶となっている若者達を次々に殺害。
更に、ロレインも地下に閉じ込めるなど、凶行に走ります。

結構、ショッキングな展開が続きますが、個人的にパールがハワードをベッドに誘った後の展開。
これをどう捉えるか?で、作品の評価が大きく決まるのではないでしょうか?

「希望的な未来しかない若者」と「絶望的な現実しかない老婆」の残酷すぎる対比

(ネタバレあり)
本作のクライマックスで、ある理由で心臓発作を起こしたハワードは亡くなり、マキシーンとパールが対峙する形となります。
ここでパールは「私はお前の未来の姿」と言いますが、マキシーンは「私には希望的な未来しかない」と反論します。

人里離れた牧場で、人生の終わりを迎えるという「絶望的な現実」しかないパールにとって、輝かしい未来だけを信じているマキシーンは、嫉妬の対象となります。

ですが、こればかりは、もうパールにとって変える事の出来ない、仕方が無い現実です。

若者と老婆の残酷な対比が印象的ですが、実はマキシーンとパールは、主演のミア・ゴスが1人2役で演じており、輝かしい未来を信じるマキシーンも、未来の姿がパールになる可能性があるという「老い」の恐怖を浮き彫りにさせる仕掛けがされています。

3部作らしいよ

本作のエンドロール後に、若い時のパールを主役にした映画の予告編が流れます
これを見る限り、若い時のパールは既にやばい人だったようですが、なんと『X エックス』は3部作構想らしいです

マキシーンも何か訳アリのようなので、今後『X エックス』という作品が、どこに向かうのか?非常に興味がありますね。

Netflixで話題沸騰の台湾発のホラー映画『呪詛』と、あの有名Jホラーの共通点を探る(ネタバレあり)

(C)2022 Netflix

2022年7月8日にNetflixで配信が開始され、日本でも話題となっている台湾発のホラー映画『呪詛』。
台湾ホラーって結構、珍しい気がしますが、一体何が日本人の心を掴んでいるのでしょうか?
実際に観てみると、ある有名Jホラーとの共通点が浮かび上がりました。

映画『呪詛』あらすじ
カメラに向かって語りかける女性、ルオナン。
彼女は、6年前のある出来事から、呪いの恐怖に怯えていました。
ルオナンは、自分の娘を守る為、一時期は里親に出していましたが、あらためて一緒に暮らす決意をします。
娘との新生活を記録する為に、カメラを回し始めたルオナン。
そこには、おぞましい呪いの惨劇が記録されており…。

現代と6年前の出来事が、同時進行する構成

『呪詛』は映画開始と共に、主人公のルオナンが観客に語りかけて来る、なかなか特殊な始まり方をします。

ルオナンは、この映画を観るにあたり、ある「符号」を覚え「呪文」を唱える事をススメて来ます。

この「符号」と「呪文」の秘密は、ラストで明かされます。

で『呪詛』の内容ですが、ある事がキッカケで呪いにかかってしまったルオナンが、一度は里親に出していた娘のドォドォと、新たな生活を始めようとする「現代の出来事」と、そもそもの呪いの起源である「6年前の出来事」が交差しながら、物語が進んでいきます。

「現代の出来事」では、理不尽にすら感じる呪いの恐怖が、「6年前の出来事」で呪いの起源が徐々に明かされる事によって「呪いの理由」が判明する構成です。

まぁ「何故呪われたのか?」を一言で表せば、完全に若気の至りです。

「現代パート」に感じる、あの有名Jホラーとの共通点

『呪詛』の「現代の出来事」は、呪いの力でおかしくなったドォドォを救う為、ルオナンが道士たちの力を借りて戦うという内容です。

一時期、ドォドォの養父になっていたミンも、呪いの秘密を解明しようと協力しますが、呪いの力により殺されてしまいます。

この、呪われてしまったドォドォを、母親のルオナンと、養父のミンが救おうとする構図は、1998年の大ヒットJホラー『リング』の、浅川玲子と高山竜司、その子供の陽一と関係性が似ています。

また「現代の出来事」は、母娘の親子の愛が前面に描かれています。

『呪詛』が日本で高い人気を得たのは、日本人が慣れ親しんできた、Jホラーに雰囲気が近い事から、すんなりと受け入れる事が出来たのが要因ではないでしょうか?

「符号」と「呪文」の意味は?呪いを回避する方法は?(完全にネタバレ)
物語が進むにつれて、呪いの元凶が明かされていくのですが、その鍵を握るのが「地下道の映像」

ラスト30分で、この「地下道の映像」が明かされるのですが、やはり若気の至りが原因だった事が分かります。

そして、ルオナンは呪いを回避する方法を見つけます

それは、呪いを他人に伝染させるという方法で、オープニングで登場した「符号」と「呪文」は、呪いを伝染させる儀式に必要だったのです。

つまり、映画を観ていた観客は、最後の最後にルオナンから呪いを伝染させられてしまい「傍観者かと思ったら。当事者になった」という事になる訳ですね。

ちなみに、映画版の『リング』も、呪いから逃げるには、ダビングした呪いのビデオを他人に見せて、呪いを伝染させる必要がありました。

『呪詛』では、呪いの伝染先が、作中の人物ではなく、観客本人になるという、なかなか面白い仕掛けになってますね。

で、面白いの?
なかなか特殊な構成の『呪詛』ですが、面白いか?と言うと、個人的には「微妙」でした。
まず、「現代の出来事」と「6年前の出来事」が交差する構成ですが、物語に集中してると、急に話が切り替わる為、ついていくのが大変でした。

また「現代の出来事」は母娘の愛がメイン「6年前の出来事」は密教の恐怖がメインなので、話が切り替わる度に、こちらの頭を切り替えないといけません。

思うんですが「現代の出来事」が終わって「6年前の出来事」で全てが明かされるという、普通に2部構成で良かったような気がします

また、恐怖演出も、急に血がドバドバと出て来たり、ゾンビみたいな演出もあり、何となく全体の雰囲気に合わない恐怖演出が、もったいなかった気がします。

特に「地下道の映像」は「引っ張った割にはこれ?」と感じました

そして、最後の最後で明かされる、本作の仕掛けは非常に面白いのですが、そこに辿り着くまでが長い気がしました。

あと、めちゃくちゃ怖いか?と言うとそうでも無いと思うので、寝る前にあえて観てみてはいかがでしょうか?

映画『ソー ラブ&サンダー』は、MCU史上最も愛に溢れた作品?(ネタバレあり)

(C)Marvel Studios 2022

アベンジャーズの中心メンバー「雷神」ソーの、新たな冒険を描いた映画『ソー ラブ&サンダー』。

一時期『アベンジャーズ/エンドゲーム』を最後に、ソー役のクリス・ヘムズワースが降板するという噂もあったので、4作目が製作されたこと自体が驚きでした。

そして『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(2013年)以来となる、ジェーン・フォスターが再登場し、物語の鍵を握る重要な存在となります。

新たなソーの冒険は、どのような内容なのでしょうか?

映画『ソー ラブ&サンダー』あらすじ

サノスとの激闘の後に、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーと共に宇宙の旅に出たソー。
激太りした自身の体をシェイプアップし、宇宙を守る気ままな戦いに投じていました。
ある時、「神殺し」の異名を持つゴアが、アスガルドに危機をもたらす事を知り、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーから離脱し、独自の行動を取るようになります。
アスガルドに再び降り立ったソーの前に、聖なる武器「ムジョルニア」を操る、新たな「マイティ・ソー」が姿を見せます。
その正体は、かつてのソーの恋人ジェーン・フォスターでした。
ソーは戸惑いながらも、ジェーンと共にゴアとの戦いに身を投じますが…。

新生ソーの、宇宙を股にかけるハチャメチャな大冒険

アベンジャーズ/エンドゲーム』以来の登場となる「雷神」ソー。
マイティ・ソー』(2011年)と『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(2013年)は、北欧神話の世界観を重視した物語でしたが、マイティ・ソーバトルロイヤル』(2017)からコメディ路線に切り替わります。

これは「アイアンマン」や「キャプテンアメリカ」のシリーズが、リアルでシリアスな路線になっていくにつれて「雷神」という設定から合流が難しくなったソーの、キャラクターそのものを変更し「リミッターを外す」という目的があったようです。

リミッターが外れたソーは、『アベンジャーズ/エンドゲーム』で激太りした姿を見せるなど、コメディ路線の、結構なんでもありのキャラクターになっていきました。

そして『ソー ラブ&サンダー』は『マイティ・ソーバトルロイヤル』の方向性を受け継いでいます。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーと行動を共にするようになったソーは、各地で騒ぎを起こす、お騒がせヒーローとなっていました。

ゴアとの戦いを決意し、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーから離れる事を決意したソーと、さっさと別れたいピーターとの温度差から、これまで各地で騒ぎを起こしていた事が分かります。

ここから、ソーの冒険は宇宙→新アスガルド→神々の宴会場→影の星と、目まぐるしく変化していきます。
本当に展開が目まぐるしいのですし、正直説明不足の部分もありますが、本作のソーのように、細かい事は気にしないスタンスで楽しむのが良いでしょう。

神への憎しみの権化!魅力来なヴィラン「ゴア」
宇宙を目まぐるしく駆け巡る、ソーが戦う今回の敵は「神殺し」の異名を持つゴアです。

ゴアは、心から崇拝していた神に裏切られ、神への憎しみから、神を殺せる剣「ネクロソード」を操り復讐を果たしていきます。

ゴアの見た目は、白くやせ細った体を布一枚で隠している、まさに「憎悪の化身」という見た目で、シンプルだからこそ、おぞましさを感じるデザインになっています。

特に「影の星」での戦いは、全てが白黒になっている為、ゴアの禍々しいオーラが強調されており、ヴィランながら、ものすごくカッコいいです。

全体的に軽く楽しいノリの本作において、ゴアの存在が作品全体に緊張感を与えています。

あらゆる「愛」が盛り込まれた作品
『ソー ラブ&サンダー』のは、約10年ぶりに、ナタリー・ポートマンが演じるジェーンが登場する点が見どころの1つになっています。

シリーズを通して「何か別れたらしい」ぐらいの情報しかありませんでしたが『ソー ラブ&サンダー』で、別れの一部始終が明かされます。

特にドラマがあった訳ではなく、倦怠期によるすれ違いでした。
別れる理由が、ヒーローとか雷神とか関係なく、男女の間でよくある問題だったというね。

ただ、本作はソーとジェーンの再会から始まる「愛」を始め、ゴアと娘の「親子愛」ヴァルキリーの民を想う「人類愛」など、さまざまな愛が描かれています。

特に、昔の武器「ムジョルニア」と再会したソーが、今の武器である「ストームブレイカー」に嫉妬されるという、謎の三角関係も描かれており、間違いなくMCU史上、愛に溢れた作品ではないでしょうか?

本作のタイトル「ラブ&サンダー」の理由は、最後に明かされますが「自分探し」をしていたソーが、新たな愛に出会い、活路を見出すという、なかなか面白い展開となっています。

【ネタバレ】唯一「愛」を感じない、あのキャラクターが今後の鍵を握るのか?
あらゆる「愛」に溢れた『ソー ラブ&サンダー』ですが、本作で唯一「愛」を感じないキャラクターがいます。

それは、全知全能の神であるはずのゼウスです。

ゼウスは、ゴアの脅威を感じながら、自分の保身のみに走り、平和の為に全く戦おうとしません。

呆れられたソーに謀反を起こされたうえに武器まで奪われ、ゼウスは一方的な恨みを、ソーに抱くようになります。

エンドロール後に、ゼウスはヘラクレスに、ソーを倒すように命じますが、これが今後の重要な展開に繋がるのでしょうか?

とりあえず、ソーのシリーズはまだまだ続きそうですね。

映画『シン・ウルトラマン』の○○が○○だったの、凄いモヤモヤしてるから書き綴ってみる(ただの感想・ネタバレ有り)

(C)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ

庵野秀明が企画・脚本・総監修、樋口真嗣が監督という『シン・ゴジラ』のタッグが、日本を代表する特撮ヒーローの、新たな映像化に挑んだ『シン・ウルトラマン』。
シン・ゴジラ』が日本中を巻き込んだ、一大旋風を起こしたこともあり、期待感も高かった事から、今年1番の盛り上がりを見せている『シン・ウルトラマン』。

令和の時代に、ウルトラマンが初めて出現したという世界なんですが、どうしても納得いかずモヤモヤしている部分があり、凄いモヤモヤしてるから書き綴ってみます。超ネタバレです。

 

ウルトラマンファンの心を鷲掴みにするオープニング

本作のオープニングは、『シン・ゴジラ』というタイトルが変化し『シン・ウルトラマン』というタイトルになるという、テレビ版で『ウルトラQ』から『ウルトラマン』に変化していく、有名なオープニングへのオマージュとなっています。
その後に、日本に突然現れた「禍威獣(カイジュウ)」の説明に入るんですが、ここで登場するのは『ウルトラQ』に出て来る怪獣達。
せっかくだから、ぺギラとの戦いとか映像化してほしいな。
そこから「禍威獣特設対策室専従班」=通称「禍特対(カトクタイ)」が設立されるまでが、凄い速さで紹介されます。
おそらく、まともに読ませる気が無いだろ?というぐらい、凄い速さで紹介されます。

 

ネロンガガボラ「禍威獣(カイジュウ)」との戦い
本作で、地球に来たウルトラマンが最初に戦うのが、ネロンガ
言わずと知れた透明怪獣ですが、「ベムラーじゃないのか?」と少しガッカリしました。

ですが、最初に登場したウルトラマンは、銀色のボディが美しく、動き方も本当に宇宙人っぽくて良かったです。
ネロンガ倒した後に、ガボラと戦うのですが、ここで出すウルトラマンの正拳突きはカッコ良かった!

 

ニセウルトラマンに、悪質宇宙人、この流れも良かった

「禍威獣(カイジュウ)」との戦いを前半で見せた後、中盤は外星人との戦いになります。
ここで「人類を越えた能力を持つウルトラマンは、実は危険な存在じゃないか?」という話になっていきます。
ニセウルトラマンとか、ちょっと展開が早い気がしたけど、ウルトラマン知らない人は、どう感じたんだろう?
ニセウルトラマンの正体、ザラブ星人との夜の街での戦いは、テレビ版のバルタン星人戦のオマージュのように感じました。
ザラブ星人の後は、ウルトラマンの中でも人気の高い、悪質宇宙人ことメフィラス星人
テレビ版で、女性隊員のフジ隊員がメフィラス星人によって巨大化されたのを、長澤まさみで再現したのは素晴らしいの一言で、称賛に値します。
ウルトラマンメフィラス星人も「よそう、ウルトラマン」と、名台詞も再現されていて良かった。
個人的に、ここで終わっても文句なかった。

 

さぁ問題、○○が○○したのが○○だった!(ネタバレ)
個人的にメフィラス星人まで良かったよ。
ただ、ゼットンが地球を滅ぼす兵器って、しかもその兵器を使うのがゾーフィって。
いや「宇宙人ゾーフィ」のネタは知ってるよ?誰よりも早くウルトラ怪獣図鑑を出そうとした出版社の、有名な失敗でしょ?
ゾーフィだから、ゾフィーとは違うんだろうけど、でも何かモヤモヤしたんですよ。
あと、ゼットン出すなら、兵器じゃなくて宇宙恐竜として、そのまま出して欲しかった。
1兆度の炎を吐く生物が「禍威獣(カイジュウ)」という世界観に合わないのは分かるけど、ウルトラマンゼットンを、普通に見たかったなぁ。
また、クライマックスだけど、そこは人間の力で何とかしてほしかったなぁ。
結局ウルトラマン頼みのような気がして、残念でした。

現時点で、まだ1回しか見てない感想を書き綴りましたが、何度か見ると新たな発見がある作品のようなので、もう5回は見ようと思います。
好きか嫌いかで言うと、大好きです。
特にメフィラス星人のエピソードは面白かったです。本当にただの感想です。